こんにちは。 リユース事業の支援ツール、meseeです。
このマガジンでは「リユースをもっと楽しむ」をコンセプトに、色々なカルチャーを「リユース」の視点から楽しめる情報を発信しています。
今回ご紹介するのは、写真家・川内倫子さん。
柔らかい光と透明感のあるトーンのなかに、命の輝きや循環をうつしだす、日本を代表する写真家さんです。
写真集『うたたね』・『花火』の2冊で、写真界の芥川賞とも称される“木村伊兵衛写真賞”を受賞し、長年にわたり国内外で活躍しています。
またプライベートでは、一児の母。
川内倫子さんは、いったいどんな人物なのでしょうか?
今回は、
という形で、フォトグラファーの人となりを通して、人物や作品の魅力を伝えられるお話しをご紹介していきます。
ぜひご覧ください。
写真家・川内倫子さんとは?
川内倫子さん 引用shashasha.co柔らかい光と透明感のある写真を撮影する写真家、川内倫子さん。
被写体は、日常の何気ない場面から、自然、宇宙までと幅広く、
「無常へのまなざしが感じられる」
「現代写真におけるもっとも革新的な作家の一人」
などと言われています。
1972年滋賀に生まれ、4歳で大阪へ転居。
18歳で成安女子短期大学(成安造形大学)へ入学し、グラフィックデザインを専攻しました。
グラフィックデザイン以外に、映像やシルクスクリーンなどいろんなアートを体験するなか、写真の授業に心惹かれ、知識を習得。
卒業後は、大阪にある広告代理店の写真部に就職しています。
その後、写真部は解散となり、失業をチャンスととらえ東京へ。
公募展に向け作品を撮り続け、2002年に『うたたね』『花火』の2作で木村伊兵衛写真賞を受賞しました。
それ以来、写真家として国内外で高く評価され続けています。
主な活躍・受賞歴
- 2002年 『うたたね』『花火』で、木村伊兵衛写真賞を受賞。
- 2005年 パリのカルティエ財団美術館にて、個展を開催。
- 2009年 ニューヨーク国際写真センター「インフィニティアワード新人賞」を受賞。
- 2013年 「芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞。
幼少期~学生時代のエピソード
引用imaonline.jp川内さんは、実は幼少期から思春期まで生きづらさを抱えて過ごしたのだそうです。
4歳のとき、滋賀から大阪へと引っ越した川内倫子さん。
引っ越しの意味がわからず、元の家に戻りたい気持ちでご両親に聞くと「帰りたいとか言うたらあかん。これからはここが家だ」という答えでした。引用huffingtonpost.jp
ショックを受け「家族とは」「人生とは」と、生きることへの疑問が初めて芽生えたのだそうです。
また本が好きだったことから、小学生の頃には週に1、2回、家の近くの図書館へ。
コンプレックスやトラウマに対する意識が強く、いろんな場面で生きづらさを感じる日々だった川内さんにとって、本の世界は忘れることができる安心する時間だった様子です。
最初に写真を意識して撮った、修学旅行
高校時代の修学旅行では、コンパクトカメラを手に、どうとらえるか考えながら海を撮影したそうです。
帰宅後、修学旅行のあいだに体験した感情は、友人たちの姿がうつったスナップだけでは表現できないと考えて、海の写真も入れたアルバムを作成。
この時から現在までずっと、いろんな写真を選択して一冊に編集するのが好きだそうです。
大学ではグラフィックデザインを専攻していましたが、写真の授業があったことをきっかかけに、写真をプリントすることに夢中になりました。
現像液のなかで画像が浮かび上がってくるのがおもしろく、プリントをしたいがために、何かを撮ろうと思うほどでした。
当時の自分を「“現実を受け止める力”が弱かったのかも」と振り返り、
「でもあのときのそういった疑問や気持ちが、今の仕事のモチベーションにつながっているという意味では、良かったのか悪かったのかわからないですが。」引用huffingtonpost.jp
と語っています。
大阪・東京での修業時代
川内倫子 公式Instagramより引用@rinkokawauchi大学卒業後は、大阪の広告代理店写真部でアシスタントとして働き始めました。
大学の授業で一通りの技術は習ったものの、露出や絞りは理解できていない状態で、現場で場数を踏みながら体得。
技術が学べて、自由に機材が使えて、写真をプリントする暗室はアトリエのように独占状態で使わせてもらえ、仕事をしながら、自分の作品も思う存分撮ることができました。
そんな恵まれた環境に変化があったのは、約一年後。
バブル終焉の影響を受け、写真部は解散となり、失業をきっかけに東京でのレンタルスタジオでの仕事に従事します。
作品は撮り続けていましたが、自分のスナップのような写真と、コマーシャル写真との違いをどうしたらいいのか悩んでいたのがこの頃です。
あるとき『写真新世紀』や『ひとつぼ展』といった公募展で、作品を発表できることを知ります。
それからは、公募展に出すことを目標に、撮った作品はポートフォリオとしてまとめ、そして2度目に応募した『ひとつぼ展』でグランプリを受賞。
審査委員だった浅葉克己さんから仕事の依頼があったことで、写真作家とコマーシャルカメラマンのふたつの領域を行き来する日々が始まりました。
日本を代表するアートディレクター、浅葉克己さん。名作ポスターやコマーシャルを多数制作。 引用tokyotypedirectorsclub.org転機となったカメラとの出会いと写真集
<span style="font-size: 9pt;"第9回写真『ひとつぼ展』グランプリ受賞者個展「うたたね」の様子 (1998年) 引用rcc.recruit.co.jp
写真の公募展が次々と新設された時代は、HIROMIXさん、長島有里枝さん、蜷川実花さんといった女性写真家が活躍していました。
川内さんは、見たら一目で誰が撮ったのかわかる、個性あふれる写真を撮る人たちから影響を受けます。
試行錯誤の末、憧れている写真家たちが、自分にあった機材を使っていることに気が付き、
“他の人が使っていないカメラだと個性が出しやすいのだろうか”と考えました。
そして「自分にはローライフレックスがある」との結論に達します。
ローライフレックスは、ドイツの会社が製造した二眼レフカメラ。
2つのレンズがついていて、ドイツ製のレンズは空気感まで切り取れると言われています。
(参考)ローライフレックス 引用imaonline.jp川内さんは「ローライは6×6の正方形の撮影サイズが特徴です。正方形は横にも縦にも引っ張られない。生々しいものを撮っても変に生々しくならずに、抽象性が増す感じがします。」と語っています。
引用toppan.co.jp
またローライフレックスは、シャッター音が小さく、ファインダーを上からのぞく姿勢になるので、被写体に気付かれにくい状態で撮影できるのもしっくりなじんだそうです。
自分の調子がいいときに撮影をしていると、被写体との一体感を感じることがあり、ローライフレックスを使っていると、よりいっそうその感覚が強くなるとのこと。
川内さんの柔らかい光と透明感のあるトーンは、こうして生まれたのでした。
ぬぐいきれない違和感
自分ならではの作風が確立しつつあり、少しずつ仕事は増えていきました。
しかし川内さんは、「個展をしても、次が続かない。これでは作家とは言えないのではないだろうか」と、写真集を出版したい想いに。
そして4年後に実現させ、『うたたね』『花火』の2冊で木村伊兵衛氏写真賞を受賞しました。
それ以降、国内のみならず海外でも個展の開催や写真集も刊行。
13冊目となる『Illuminance』は、5か国で出版されるほど高い人気と活躍ぶりです。
関連記事:シンプルだけど奥深い「モノクロ写真の魅力」
プライベート ―川沿いの家と子育て―
写真集「as it is」より引用tokyoartbeat.com川内倫子さんは44歳で第一子を出産。
千葉県の房総エリアで夫と娘さんの3人で暮らしています。
子どもが生まれるまで暮らしていたのは二子玉川で、部屋の窓からは多摩川が見えていました。
春には桜、初夏には新緑と、川やその周辺に訪れる季節の変化を感じる日々のなか「この部屋に住んでいる理由は、川が見えるから」と思うほど、川が大切な存在になっていったそうです。
現在の住まいに引っ越してきたのは、娘さんが1歳2か月の頃。
大きな窓から、美しい緑とすぐそばを流れる川が見える、自然豊かな場所です。
妊娠中に家探しを始めたのですが、条件は「家から川が見えること」。
土地を紹介され見学に来たとき、まだ竹藪の状態でしたが中へと足を踏み入れてみると、川のせせらぎが聞こえてきて、曇り空が晴れていき、太陽の光が差し込みました。
その瞬間に「ここだな」と直感し、住むことを決めたそうです。
自然豊かな、新しい生活
川内倫子シリーズ「M/E」より(2021) 引用tokyoartbeat.com引っ越してきてからは、仕事の仕方も変わります。
以前は自宅から3分ほどの場所に仕事場を借りていましたが、ずっと臨戦態勢で、仕事とプライベートの境目をあまり感じられませんでした。
東京から離れた自然豊かな現在の家では、2階が仕事場。
行きづまったら1階へ行って家事をして、2階へ上がると仕事モードに切り替わり、家のなかでオンオフモードのどちらにもなれる、ベストな状態を感じているそうです。
妊娠・出産による大きな心境の変化はあったものの、写真を撮る対象はそのままで、そこに娘さんが加わったとのこと。
以前から生死を見つめていた、川内さん。
それでも生まれたばかりの子どもを育てていく過程で、子どもが生死を内包している存在であることに気付いたのだそう。
また自身が子ども時代に、大人の価値観の押しつけに苦しんだことから、娘さんにはそういう押しつけをしないよう心がけている様子。
とはいえ、善悪の判断や、叱らなければならないときに、どう伝えたらいいのか迷いながら過ごしているそうです。
写真の絵本「はじまりのひ」(2018年) 引用rinkokawauchi.com初期からの通奏低音
作品の展示風景 引用tokyoartbeat.com長年第一線で活躍していますが、ずっと根底にあるものがあります。
一つ目は「写真を撮影するときのこと」です。
- 身体の動くまま、本能に任せてシャッターを切る。
- 暗室にこもり写真をプリントして、なぜこの写真を撮ったのかを自分を知っていくかのように考える。
- 撮りたいものはまず撮影して、自分の無意識がキャッチしたものは何なのかを考える。
毎回この行動を繰り返しているそうです。
二つ目は「撮った写真を世の中に出すか、出さないかの判断」となるもの。
- 自分の想像を超えて、自分のものでなく、何か違うものになっているか。
- みんなでシェアできるものになっているか。
- わざわざ出版する価値があるのか。
“個人的な思いから解放されたものじゃないと、発表する意味がない”との考えからの、判断基準のようです。
― 身体を移動し、撮影したものと向き合うという行為でしか得られないものがある。
それはなぜいまここに生かされているのか、という答えのない問いに少しでも近づくための、自分にとって有効な手段だ ―
引用 個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり 作家ステートメント」より
川内さんのこれからの作品も楽しみです。
この記事に登場する写真集たち
『うたたね』 引用rinkokawauchi.com 『花火』 引用shashasha.co 『Illuminance』 引用rinkokawauchi.com中古市場について
ここまで、川内倫子さんについてご紹介しました。川内さんの写真集などをご紹介してきましたが、リユースという観点で、川内倫子さんの写真集を見ると、「うたたね」「花火」などは出回っている冊数も多く、2,000〜3,000円前後と、比較的お手頃な価格で手に入れることが出来そうです。
「Illuminance」は上記2冊よりもやや高い金額で取引される傾向があり、5,000円前後の価格がつけられている事が多いようです。
写真集によって価格帯は異なりますが、初版のものやもう絶版になってしまったもの等はやはり高く評価される傾向が強そうです。
「川内倫子さんのような写真を撮りたい!」とお思いの方が気になるのが川内さんの使用機材かと思いますが、今回お話した川内さんの愛機、Rolleiflex(ローライフレックス)に関しては、レトロな2眼レフということで、中古市場でも非常に人気があります。
ローライフレックスといっても歴代で様々な機種が発売されており、中古市場での価格も様々ですが、購入して問題なく使えるものとなると10万〜40万前後になる機種もあります。
ジャンク品は安く購入できるものもありますが、初めて2眼レフカメラや古いカメラを手にするという方はやはり専門店での購入や売却がおすすめです。
ぜひmeseeで専門店を探してみてください。
ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んで下さりありがとうございました。
家族をはじめ、人や、植物、動物など日常にあるものから、火山や氷河、宇宙をイメージさせるものまでを撮影する、川内倫子さんについてご紹介しました。
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