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今回ご紹介するのは、北欧の人気食器ブランド「ARABIA(アラビア)」についてです。
日本でも根強いファンが多く、食器や家具など様々に愛されている北欧デザイン。
「北欧やフィンランドのテイストが好み」「北欧食器やアラビアが好き」そんな人も多いのではないでしょうか。
今回は、
という形で、ARABIAの歴史や人気シリーズ、中古市場についてご紹介していきます。ぜひご覧ください。
ARABIA(アラビア)とは?
引用mistore.jp 引用tokyo21.jpn.org「ARABIA(アラビア)」とは、北欧食器として愛されている陶磁器ブランドです。
1881年にフィンランドのイッタラ村にある小さなガラス工場ではじまった「iittala(イッタラ)」などを扱う、ライフスタイルブランドを展開するフィスカース社のブランドのひとつにあたります。
「イッタラ」「アラビア」という北欧ブランドの名前は、北欧好きな人に限らず誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
その中でアラビアは、陶器の芸術性・デザイン性に秀でているだけでなく、毎日使うものだからこその使い勝手に配慮した、実用性の高さが特徴です。
ミニマルでシンプル、どんなシーンにも活躍するデザイン。
それだけでなく、見てすぐに「アラビア」とわかるようなストーリー性のある華やかなデザインまで、バリエーション豊富なシリーズ展開も魅力といえます。
アイテム展開としては、お皿やカップといった食器だけではなく、コーヒーポットやシュガーポットなど、生活を豊かにしてくれるアイテムがあり、現在も世界中で愛され続けているブランドです。
ARABIAの歴史
ARABIAの創業
当時ロールストランドで人気だったシリーズ 引用mothersweden.jpアラビアの創業は、スウェーデンの陶磁器ブランドである「ロールストランド」の子会社として創業した1873年に遡ります。
「フィンランドの会社なのになぜ社名がアラビア?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんが、ブランド名の由来は地区名称。
創業当初は、フィンランドの首都であるヘルシンキのアラビア地区に工場を構えていたため、そこからブランド名を付けたのです。
当初は、シンプルで合わせやすいデザインの白陶器を中心に製造していていました。
華やかなデザインのシリーズを展開することもありましたが、基盤となる形やデザインは、すべて親会社であるロールストランド社と同じであったり、親会社から派遣された絵付け師であったり。
あくま“子会社としての活動”を中心に行っていましたが、アラビアはそこから脱却すべく「自社の開発したデザイン」を追求しようと、デザイナー取得に力を入れていきます。
その結果、1900年のパリ万国博覧会で、見事金賞を受賞。
モノトーンで描かれた“美しいフィンランドの風景・草花”をデザインに落とし込み、テーブルウェアとしてもため息が出るほど美しいデザインに、世界中が魅了されました。
ちなみにこの頃、フィンランドから影響力のある作曲家や建築家も多く生まれていた時期でした。
アラビアの芸術性が高く評価されたことも手伝って「フィンランド芸術の黄金期」とも言われています。
親会社からの独立
1941年 ビルガー・カイピアイネンの作品 引用d2mpxrrcad19ou.cloudfront.netロシアからフィンランドが独立する1年前の1916年、アラビアは大きな転機を迎えます。
今までの親会社であったロールストランド社から独立し、ひとつのブランドとして、自分たちのデザインしたテーブルウェアを展開すべく歩み始めたのです。
今までアラビアが展開してきた、主流ラインナップの“白のプレーンな陶器”から脱却し、オリジナルのデザインを重視した社風が築かれていくのもこの頃です。
デザイン部門には、のちに「パラティッシ」シリーズを生み出すビルガー・カイピアイネンを引き入れ、高いデザイン性と実用性を兼ね備えた製品を展開。
また若い才能を見つけ出すことにも注力していて、今後のアラビア社の人気シリーズをデザインした新進気鋭のデザイナーも、ここで多く仲間に加え入れることになりました。
セラミックデザイナー ビルガー・カイピアイネン 引用kuovi.fiカイ・フランクの入社
カイ・フランク 引用iittala.jp次の転機は「フィンランドデザインの良心」とも言われるデザイナー、カイ・フランクの入社です。
彼のルーツは、イタリアのルネッサンス期の芸術作品。
芸術品に大きく影響を受けていた彼は、入社してすぐに頭角を現し、牽引力のあるデザイナーへと成長していきました。
1945年に第二次世界大戦が終結し、その翌年カイ・フランクがアートディレクターに就任。
カイ・フランク率いる当時のアラビアのアート部門は「敗戦国のフィンランドで、庶民の食卓を少しでも豊かにすること」を命題にしていたそうです。
彼が発案した、“シンプルで心動かされるデザイン、スペースが狭くても積み重ねて収納できる、手に入りやすい価格帯の食器”は、またたく間に伝説的なロングセラーになりました。
当時彼が提案したシリーズは「日用品のより良い刷新」を基盤にしていたこともあり、それが今後も続いていくようにと、現在フィンランドでは毎年11月に「カイ・フランク・デザイン賞」を行ってます。
優れた装飾デザインではなく、日常使用に最適な機能美を追求した製品に送られる、カイ・フランク・デザイン賞。
彼の魂を受け継ごうとするフィンランドの意志が感じられます。
現在のARABIAへ
そうしたいくつもの過程を経て、アラビアは1984年に、もとは親会社だったロールストランドを傘下に収めるほどに成長していきました。
その後1990年に、イッタラとともにハックマングループ(後にハックマングループはイッタラに名称を変更)に買収され、2007年にはフィスカースグループの傘下になりました。
つまり今現在「アラビア」という会社は存在せず、イッタラを扱うフィスカース社で人気テーブルウェアブランドとなっているのです。
ARABIA人気シリーズ
パラティッシ(Paratiisi)
引用freedesign.jp北欧食器の代表とも言える、アラビアの“パラティッシシリーズ”。
1969年に「フィンランド陶芸界のプリンス」と形容されるデザイナー、ビルガー・カイピアイネンのデザインで作られました。
先述しておりますが、ビルガーはアラビア独立時に活躍したブランドにとっての重要人物でもあります。
夏の植物をモチーフにした大胆なデザイン。
それを鮮やかなビビッドカラーやモノトーンで落とし込んでいて、食器のデザイン自体に主張があるにも関わらず、何を盛り付けても異なる表情を見せてくれる点が魅力です。
アイテムの展開バリエーションも豊富で、メインプレートの他に、マグカップや小皿、シリーズで揃えることで、溢れんばかりの力強いエネルギーがテーブルを彩ります。
パラティッシの中には、イエロー、ブラック、パープルの3つのカラーバリエーションがあり、それぞれカラーによって異なる印象です。
「イエロー(カラー)」
引用arabiajapan.jp
1969年に展開された、初めてのパラティッシ。
シリーズ内で最も鮮やかな色使いで、ビビッドなトーンの黄色・青・緑が使われていて、「パラティッシといえばイエロー」と指名買いする方も多いカラーです。(公式サイトでは、“カラー”と表記されています。)
植物の力強いエネルギーが鮮やかなカラーで表現されていて、テーブルが一気に華やぎます。
「ブラック」
引用arabiajapan.jp名の通りモノトーンのシリーズ。
イエローパラティッシから4年後の1972年に販売されてから、幾度か生産中止になりながらも、人気が高いため度々復刻されています。
お皿自体にカラーが使われていないため、鮮やかなカラーの果物や野菜などが非常に美しく見えることと、合わせる食器を選ばずにテーブルに溶け込むことが人気の理由です。
ギフトなどにも一番人気のカラーになっています。
「パープル」
引用arabiajapan.jp2012年に北欧の老舗百貨店「ストックマン」の150周年を記念して特別に作られた、限定シリーズ。
販売と同時に日本ではすぐに完売し、パラティッシのシリーズの人気を加速させた限定ラインです。
華やかなパープルや深い緑などを用いた水彩画タッチのデザインが魅力で、“イエローシリーズ”よりも落ち着いた、シックなニュアンスカラーの色合わせが特徴です。
スンヌンタイ(Sunnuntai)
引用freedesign.jpパラティッシシリーズを手掛けたデザイナーの代表作のひとつ、スンヌンタイ。
明るく花がぱっと咲いたような明るいデザインで、レトロで素朴なイメージも持ち合わせていて、シンプルなデザインでもいきいきとした強い生命感を感じさせてくれます。
見てすぐにそれとわかる王道デザインだけではなく、個性を感じさせるニッチなアイテムを好む方にも最適なシリーズです。
1971年の発売当初は、イエロー・グリーン・レッドの3パターンで展開されていましたが、当時の販売期間はわずか数年と短かったため、ヴィンテージはなかなか手に入りにくいと言われています。
そのスンヌンタイの“イエロー”のシリーズが、パラティッシの誕生50周年を記念して復刻され、大きな話題を呼びました。
また2020年には”グリーン”のマグカップが日本限定色で発売され、現在は北欧と日本でのみ展開されている希少性の高いアイテムになっています。
フィンランド語で「日曜日」を意味するスンヌンタイは、休日ならではのワクワク感を盛り上げてくれる、明るいカラーのデザインが特徴で、男女問わず使えるため、ギフトにも非常に人気なシリーズとなっています。
<span style="font-size: 9pt;"2020年復刻 日本限定色“グリーン” 引用arabiajapan.jp
パストラーリ(Pastoraali)
引用arabiajapan.jp1965年に、アラビアのデザイナーとして一時代を築いたエステリ・トムラがデザインしたシリーズ、パストラーリ。
パストラーリはフィンランド語で「牧歌」という意味で、古代ギリシャのラブストーリー「ダフニスとクロエ」がモチーフとなっています。
モノトーンでシックに描かれた繊細な印象の少年と少女。
そこに鮮やかなブルーでアクセントを加えていくことで、テーブルウェアであるにも関わらず、絵画のように緻密で美しい彼女の世界観がデザインされています。
繊細な柄がプレートいっぱいに描かれているのに、柄の主張が激しすぎるわけではなく、どんな食べ物を置いてもしっかりと馴染んでくれるのも、人気の秘訣です。
もともと美しく繊細なデザインのパストラーリは、発売当初から人気ではありましたが、2017年発売の「フィンランド独立100周年記念マグ」で再び脚光を浴びるように。
記念マグは10種類のシリーズの絵柄で販売されたのですが、パストラーリのマグが最も人気が高かったことで、改めて人気に火がついたのです。
繊細な絵付けで他にはないデザインで製作数も少ないため、希少性が高く、ヴィンテージでも非常に人気のあるシリーズになっています。
引用arabiajapan.jp
24h アベック(24h Avec)
引用arabiajapan.jp24h Avecは、2003年に、アラビア創業130周年を記念して発売されたシリーズ。
もともとはデザイナーのヘイッキ・オルヴォラがデザインした「24h」という人気シリーズに、カティ・トゥオミネン=ニーットゥラがパターンを施したものです。
「朝から晩まで24時間使える」をコンセプトに作られた24hシリーズの白い食器に、淡いカラーの細かい模様が放射状に描かれていて、クリーンで清楚な印象を与えてくれます。
大きな特徴は、上に乗せるものや合わせる食器を選ばないこと。無地のお皿感覚で使える点が人気の秘訣となっています。
日本では、フィンランドを舞台にした映画「かもめ食堂」の1シーンに登場したことで、一躍脚光を浴びました。
パターンを施したカティ・トゥオミネン=ニーットゥラは日本の陶芸に造詣が深いそう。
このシリーズも「北欧ブランドの人気シリーズなのに、どこか和の趣を感じる」と日本での評価も高く、茶碗やお椀と一緒に並んでいても違和感がありません。
日本の食卓にもしっかりと馴染んでくれるシリーズです。
引用finnishdesignshop.com
エステリ(Esteri)
引用arabiajapan.jp1973年にアラビア100周年を記念して、エステリ・トムラがデザインした「エステリ」。
白地に映える鮮やかな青色で描かれた、生命力あふれる大胆な花々が食器全体を彩る、印象的なシリーズです。
1973年当時、エステリがリリースされたのはその1年間だけで、アイテムもカップとソーサーのみ。
それから44年の時を経て、フィンランド独立100周年記念マグの1つとして復活し、当時の希少性も合わせて話題になりました。
エステリ・トムラは身近な植物からヒントを得て様々なデザインを考案していますが、共通点は「繊細な細い線でモチーフを描いている」こと。
繊細で美しいモチーフを、鮮やかな洗練されたカラーで描き起こすことによって、彼女にしか作ることの出来ないデコラティブなデザインを生み出し続けていました。
彼女のデザインした繊細な装飾は、ヴィンテージでもなお色褪せぬ人気を博しています。
引用arabiajapan.jp
ムーミン(Moomin)
引用arabiajapan.jp原作者トーベ・ヤンソンが描く、誰もが知っている名作中の名作「ムーミン」。
原作者の世界観をそのままに、使う人の心が浮き立つムーミンのテーブルウェアを、1990年にカイ・フランクがデザインしました。
いままで30年以上にわたって、100種類を超えるムーミンのマグがデザインされてきましたが、そのどれもが世界中で色褪せない人気を保ち続けています。
定番デザインのマグと、数量やシーズン限定で発売される限定的なマグがありますが、定番のものも絵柄やキャラクターを変えたりと、常に同じラインナップではないことが特徴です。
もともとベースになっているのは「イッタラ」の「ティーマ」のシリーズのもので、今現在も廃盤・追加を繰り返しながら、世界中で愛され続けています。
種類やカラー、キャラクターのバリエーションも非常に多いので、家族でキャラクターを決めて使ったり、オフィスでも一目見ればわかる自分のマグを持ち込んで使うのもおすすめ。
そんなムーミンマグですが、実はコレクターズアイテムとしての人気も非常に高く、なかには何十万円もの値がつく希少なヴィンテージ品もあるんだとか。
廃番になると一気に市場価格が高騰するので、気に入ったものがあれば早めに手に入れることがおすすめです。
2022年 ウィンターマグ 引用arabiajapan.jpヘルヤ・リウッコ(Heljä Liukko)
陶板 “うさぎさんチーム” 引用kogmas.com バニーマグ “卒業” 引用kogmas.comこちらは厳密にはシリーズ名ではなく、作家の名前なのですが、卯年の今年、ぜひおすすめしたいのがこちらのヘルヤ・リウッコ・スンドストロム (Helja Liukko-Sundström)がデザインしたシリーズ。
ウサギの絵本などの画家としても有名な彼女は、1962年から1967年まで同社に在籍しており、可愛らしいウサギや天使の絵のシリーズや、生き生きとした植物の絵のシリーズなどを展開しました。
彼女の独特なイラストが楽しめるマグカップや陶板などは、ヴィンテージ品として中古市場でとても人気で、現在も高額で取引されています。
陶板 “帰り道” 引用kogmas.com中古市場での評価
ここまで「ARABIA(アラビア)」の魅力についてご紹介しました。
ここではそんなARABIAのアイテムたちは、中古市場でどのように評価されているのか?についてご紹介していきたいと思います。
長い歴史を持つARABIAですから、アイテムの年代によって中古市場での評価額も変わってきます。
総じて高い評価を得ているブランドですが、もう手に入らないヴィンテージ系のアイテムはコレクターなどの間でとても高い評価で取引され、逆に現行の食器などは、未使用品や綺麗な状態のものが日常の食器や道具として評価されています。
今回ご紹介したように、過去の人気モデルが復刻されたり、ヴィンテージのアイテムが高い金額で取引されていたりなど、古いものでも価値を失わずに評価されているのはARABIAというブランドならではのことではないでしょうか。
貴重なヴィンテージ品などは、未使用でなくても高く売れる可能性がありますから、使っていない食器などが眠っている場合にはフリマアプリでの売却やお買取サービスのご利用を考えてみても良いかもしれません。
ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んで下さりありがとうございました。
今回は、人気の北欧食器ブランド「ARABIA」について、ご紹介させていただきました。
現在の人気に至るまでの歴史やシリーズの特徴、中古相場など、アラビアの背景や魅力が知れたのではないでしょうか。
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